「〜飯縄山麓発〜白地図を夢色に」白地図をぬろう会/編著 より

飯綱町の西側の旧牟礼村地域を鳥居川まで貫いて流れる「八蛇川」の源流域に滝ノ沢があります。
飯縄山(標高1917メートル)と霊仙寺山(1875メートル)にはさまれて深い峡谷があり、その峡谷から押し出された土石流が高原上に肥沃な扇状地を形成しています。
豊富な湧水があり、本流のほかに支流を幾筋も形成し、その周囲にはタチカメバソウ、ニリンソウ、シダ類などが豊富に見られます。近くには野生ランも見られます。
また、ミズナラやヤマザクラ、ホオノキ、サワグルミ、クリ、ハルニレなどが見事な巨木の群落を形成しています。またアブラチャンなどの下層、中層の木本群落、林床のシダや草本群落などが、調和のとれた気持ちよい森をつくっています。
滝ノ沢の南側には、ササの群落や木々がそこだけぽっかりと空いている秘密の場所があります。露岩は、苔（こけ）で覆われていますが、苔のついていない岩もあります。硫黄の匂いがただよう不思議な世界です。
そして、ここからさらに上流に幻の滝があります。「“滝ノ沢”という名前が付いていますから、先人は苦労もなく滝まで足を運んでいたのかもしれませんが、現在では容易に達することができません。険しく切り立ったS字状のゴルジュの水流は、奔流となって行く手をはばんでいますし、高捲きするルートもありません。唯一滝に到達できる可能性があるのは、春先に残雪に覆われ、両側の雪崩の危険性がないころですが、周囲からの落石もあり非常に危険です。一般の人はとても近付けませんが、もしそれらを突破すれば、落差50メートルはありそうな2段の見事な滝を見ることができるでしょう。


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