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「八蛇川上流」異形なるものたち

「八蛇川上流」異形なるものたち 「八蛇川上流」異形なるものたち

「〜飯縄山麓発〜白地図を夢色に」白地図をぬろう会/編著 より

ヤマウツボという珍しい奇妙な植物が飯綱町にあります。八蛇川上流の沢沿いを歩いていて、落葉が重なる斜面に桃褐色の 無気味な姿を14株も目にしたときは驚きました。ムーミン谷に出てくるニョロニョロ(土筆に目の付いたような生き物)み たいだなと思いました。
ヤマウツボはサワシバというカバノキ科の樹の下にありました。この異形なるヤマウツボの仲間は、長野県版のレッドデータブック(注)のロ絵写真に掲載されており、カバノキやブナ科の植物に寄生するとされていますが、飯綱町での分布記録はありませんでした。(※1)そのほかに特筆すべきこととして、この八蛇川上流の渓谷にはトクサ(木賊)が多く自生しています。各所に大群落を形成していて、その姿は恐竜が出現する太古の世界のようです。また、メグスリノキが渓流の水面の上に枝を渡し、柔らかい産毛を持つ新しい葉を広げたりしています。
八蛇川支流の最上部にあたる上村地籍には、ハンノキ林が生育する湿潤な水源地にツチアケビがあります。その奇妙な姿 は、ヤマウツボにも引けを取りません。寄生ランですが、不思議な生態を繰り拡げます。真夏に奇妙な花を付け、葉もなく桃褐色の怪しげなる姿をし、さらに秋になればウインナーソーセージのような少しグロテスクな実を鈴なりにぶら下げます。
八蛇川上流部は、旧牟礼村地域の水田が広がる里と飯綱東高原との間にあって、特別に関心を持つ人はあまりいませんが、 じつは不思議な生き物がいる博物館です。樹木もよく成育しています。その一方で、意外に険しい地形と行く手を拒む水の流れがあり、探検の場としても一級というところでしょう。

(注)レッドデータブック:絶滅が心配される動物や植物の種名がリストアップされた資料のこと
(※1)長野県自然保護研究所編(2002) 長野県版レッドデータブック維管束植物編

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