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「丹霞郷」早春の景色に酔う

「丹霞郷」早春の景色に酔う

「〜飯縄山麓発〜白地図を夢色に」白地図をぬろう会/編著 より

4月末の暖かい日を選んで、平出地区の庚申塚から三本松までを歩いてみました。
「丹霞郷」という名は、明治から昭和にかけて活躍した洋画家の岡田三郎助(おかださぶろうすけ)がこの近くで命名したもの。丹は淡い赤色すなわち「桃色」、霞(かすみ)は花の咲くころにたなびく雲のタネのようなもので、ちょうど薄いスリガラスを通して景色を見るような薄ぼんやりした眺めのことのようです。
歩いているうちに、自分の思考も薄ぼんやりとなってきます。「旧道から桃畑に沿うように作業道が続いており、道沿いに岡田三郎助や辻永(つじひさし)などを目指す画家たちがイーゼルを立てています。「すこし寒いですね。筆は進みみますか?」と聞けば、「いや、眺めているときのほうが長くてね。一輪で咲く山野草もいいが、一群の花もまた見ごたえがあって絵心を誘いますね」とのこと。
遠方には飯綱・黒姫・妙高と続く山々、その間にまだ白雪の高妻・乙妻の山を見ることができます。
排気ガスもない、清らかな空気のおいしさは格別です。2時間近くをかけてゆっくり歩き、小林一茶ゆかりの「別れの三本松」のある道へ着きました。
さて、桃は花がきれいに咲いている間に、花摘み作業が行われます。ひと枝に二つか三つの花を残し、あとはこそぎ落とすように花を摘んでしまうわけです。果樹生産に取り組む先人たちの努力をへて、この景色がつくられてきました。
このような景色のすばらしさは、ちょうど懐石料理の味と同じで、言葉ではなかなか表現できません。
風景に酔う「酔景」というような造語はいかがでしょうか。
「自然」は日本の神々です。石や、山や、滝や、木など、人の手を離れたそれらのありのままの姿には、神々の存在を感じます。
俳句に「山笑う」という季語があるように、春の山々はやさしく、まだ幼いウグイスが、ホーホケ...!!と鳴いています。

【はらうても はらうても 春 つきまとふ】

桃の花が終わりとなったら、そろそろ田植えの準備になります。

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